FREDMAN
コラム2026.08.31

講談社の情報流出は他人事じゃない——AIで巧妙化する「なりすましメール」

講談社の情報流出は他人事じゃない——AIで巧妙化する「なりすましメール」

生成AIによって、これまで出来なかったことが出来るようになったり、短時間で大量に出来るようになりました。業務効率化はもちろん、生成AIに相談しながらホームページを作ったり、音楽を作ったり、まさに魔法の道具のようになっています。

しかし、その恩恵を受けているのは詐欺師も同じで、乗っ取り詐欺をするための仕組みや文章が簡単に大量に作れるようになりました。2026年に入ってから情報漏洩や乗っ取り被害のニュースが増えているのは、こういった背景によるものだと思われます。

講談社で起きた情報流出は、どこで起きてもおかしくない

2026年7月、講談社の社員に、取引先を装ったフィッシングメールが届きました。社員がメール内のリンクをクリックし、偽のログイン画面に認証情報を入力したことで、社用メールアカウントが不正利用されました。

攻撃者は、そのアカウントに保存されていた最大3,812件の連絡先情報を窃取。さらに、そのうち553件のメールアドレスへ、講談社社員を装ったフィッシングメールを送信しました。

  1. 取引先を装ったメールが届く
  2. 偽サイトでIDとパスワードを盗まれる
  3. 本物のメールアカウントと連絡先が奪われる
  4. そのアカウントから、取引先や知人へ新たな詐欺メールが送られる

1通のメールから始まった被害が、本人だけでなく、その先の取引先へ広がっていったのです。当該社員本人がすぐに気づいて対処したため、取引先や知人には被害は及ばなかったと思われます。

講談社「不正アクセスによる個人情報流出のお詫びとお知らせ」

2026年に入り、続出している情報流出

同じような被害は、最近もさまざまな組織で起きています。

  • さくらインターネット(2026年8月):「さくらのレンタルサーバ」の583アカウントへの不正ログインと、一部サーバーへのマルウェア設置が確認されました。販売管理システムでも最大1,360,563アカウントの会員情報に影響した可能性があり、調査が続いています。同社は、この件に便乗したフィッシングメールにも注意を呼びかけています。公式発表
  • 日本大学法学部(2026年8月):教職員1名のメールアカウントがフィッシングで乗っ取られ、学内外へ3,177件の不審メールが送信されました。公式発表
  • 食品流通企業のトーホー(2026年4月):社員1名のメールアカウントが不正利用され、取引先へ不審メールが送られた可能性が公表されました。公式発表
  • 国立医薬品食品衛生研究所(2026年2月):Webメールが第三者に不正利用され、外部へリンク付きのフィッシングメールが送信されました。公式発表

出版社、大学、食品を扱う企業、公的な研究機関、インターネットインフラ企業。業種も組織の大きさも関係ありません。大きな会社だけが狙われているのではなく、メールやインターネットを使うすべての組織・個人に起こり得る問題です。

AIで詐欺メールは「作りやすく、見抜きにくく」なった

以前の詐欺メールには、不自然な日本語や場違いな言い回しが目立つものもありました。しかし生成AIを使えば、自然な敬語やビジネスメールを短時間で作れます。

会社名、担当者名、役職、業種などの情報を与えれば、相手に合わせた文章も作ることができます。翻訳や文章の修正もできるため、攻撃者が日本語を習得している必要すらありません。

同じ内容の言い回しを変えたり、相手ごとに文面を調整したりすることも簡単です。これまで手間のかかった「自然な表現で具体性のある詐欺メール」を、安く、速く、大量に作れる環境が整ったのです。

2026年度版のフィッシング対策ガイドラインでも、生成AIを使った自然な文章表現や、個別に最適化されたメッセージによる攻撃の巧妙化が指摘されています。

⚠️ 講談社の事例で、生成AIが使われたと公表されているわけではありません。ただし、この事例が示した「本物らしいメールから被害が連鎖する危険」は、AIによってさらに身近になる可能性があります。

フィッシング対策協議会「フィッシング対策ガイドライン 2026年度版」

100%見抜くことは不可能だと思った方がいい

文章が自然で送信元も本物であれば、それが詐欺であると見抜くことは非常に困難です。

もちろん見抜く方法を知る必要はありますが、詐欺メールに引っかかってしまった時の対応方針も決めておいた方が良いでしょう。

個人の注意だけに頼らず、社内ルールや相談しやすい環境を組み合わせて、被害を未然に防ぐだけでなく、もしもの時に被害を最小限に抑えることも想定しておかなければいけません。

もはや他人事ではなく、次は自分かもしれない

フィッシング被害は、IDやパスワードを盗まれた本人だけで終わりません。顧客や取引先の情報が漏れ、自分の名前で新たな攻撃が送られれば、周囲の人や会社の信用まで巻き込まれます。

迷惑メールはもはやパッと見では見抜けません。私のような人間でもギリギリまで見抜けず、あまりの作り込みに感心してしまうこともあるほどです。

少し面倒ですが、メールのリンクやボタンを押す前に一度確認する。その小さな習慣が、自分だけでなく取引先やお客さまを守ることにつながります。

怪しいメールの具体的な見分け方と、もしクリックしてしまったときの対処、そして詐欺メールが何を狙っているのかは、次の記事にまとめています。

「うちは大丈夫か」を、一度プロに確認しませんか

「どんなメールに気をつければいいか」「もし開いてしまったらどうするか」——こうした対策を社内のルールとして整えておくことが、いざという時の被害を大きく左右します。

株式会社FREDMANでは、メールやパソコンの設定、社内のセキュリティ体制に潜むリスクを洗い出し、無理なく続けられる対策づくりまでをまとめてお手伝いする「ITまるごとサポート」を提供しています。

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